インフォームド・コンセントの指針

2019.4.1.策定

当オフィスでは、相談者の知る権利、自己決定権、自律の原則を最大限に尊重したインフォームド・コンセントを行い、相談者の皆様の尊厳と権利に配慮いたします。そのため、心理的支援を提供するにあたって適切な説明を行い、カウンセリングを受ける方々の理解を得るように努めています。なお、企業・事業主・その他とのご契約によって従業員等にカウンセリング・サービスが提供されるEAP=従業員援助プログラムの場合には、下記の内容と若干異なる場合がございます。



基本姿勢

すべての相談者は、いまある自分にとって最適で安全な心理的支援を、必要に応じて受ける利があります。すべての相談者には、カウンセリングの目的と方法、カウンセリングから受ける恩恵と危険性、選択し得るカウンセリング以外の援助手段、心理的支援にあたる者の資格や経歴などについて、カウンセラーから十分に理解できるまで説明を受けたうえで納得し、自分自身の自由な意志にもとづいて心理的支援に同意したり選択したりする権利だけでなく、それを拒否する権利もあります。

トポス心理療法オフィスは、相談者の皆様に最適で安全な心理的支援を提供し、カウンセリングを受ける方々の自己決定権・知る権利・自律の原則を遵守するために、誠意のある丁寧な説明を行います。このような一連の説明・理解・同意・主体的選択のプロセスをインフォームド・コンセントと言います。



インフォームド・コンセントの実際

  • 必要な事項に関する説明は、カウンセリングの担当者が、初回面接の冒頭で行います。できるかぎり専門用語の使用は避け、ご本人が理解できる言葉で説明します。その際には説明文書を活用して、口頭と文書の両面から理解しやすい説明を心がけます。説明後には相談者が理解できたこと、できなかったことを確認し、十分に理解していただけるまで説明いたします。質問に対しては、丁寧に回答いたします。
  • カウンセラーの説明を相談者が十分に理解して同意し、双方の合意形成が確認されてから、カウンセリングの同意書にサインしていただきます。同意書は同じものを二通作成し、相談者とカウンセラーがそれぞれ一通ずつ保管することになります。相談者には、その時に使用された説明文書もお渡しします 。
  • 2回目以降のカウンセリングでは、必要に応じて適宜口頭で説明を行います。また、相談者に疑問などがあればいつでもお答えしますので、遠慮なくご質問ください。
  • カウンセリングに関して最初に合意形成された内容を、継続カウンセリングの中で見直すことも可能です。カウンセラーから提案することもありますが、何かありましたら遠慮なくお申し出ください。話し合いのうえ見直します。


個人情報保護に関するプライバシー・ポリシーはこちらです。初回面接の際に説明される項目が多く含まれていますので、お申し込みの前に必ずお読みください

 



 


 カウンセリングとインフォームド・コンセント

医学の領域ではインフォームド・コンセントが当然の時代になりました。では、カウンセリングや心理学の領域ではどうでしょう。心理学の場合、何かの調査研究を行うときには事前のインフォームド・コンセントが必須です。時代の流れなのでしょうが、研究協力者を保護するための研究倫理が厳しく問われるようになり、学会の研究発表や論文執筆の際には、研究協力者の承諾はもちろんのこと所属機関の倫理審査をクリアすることもいまや当然の前提となりつつあります。では、カウンセリングの現場はどうなっているのでしょうか。カウンセリングの場合、さまざまな職業倫理が学会レベルで規定されています。日本臨床心理士会や日本心理臨床学会の倫理規定が代表的なものです。そのため、それらの学会や団体に所属している心理士は、カウンセリングに際してすでに十分なインフォームド・コンセントを行っていると思います。

心理的支援としてのカウンセリングを提供する当オフィスのような私設心理相談室は、医学的な治療を提供する医療機関ではありません。しかし、公認心理師の時代を迎えたこともあり、カウンセリング・サービスに関するインフォームド・コンセントはますます重要な手続きになったと考えられます。相談者の様々な権利を保護して自己決定の原則を遵守することは、医療機関や福祉施設だけでなく、われわれのような私設心理相談室を開設してカウンセリングを提供する心理臨床家にとっても当然のことです。ただ、相談者に対して伝達すべきことを一方的に伝えるだけでは、望ましい行為であるとは言えません。大切なのは、そのときの相談者に適した方法と内容でもってお伝えすべきことをお話ししてから、相談者が十分に納得できるまで話し合えるということです。一方的な伝達ではなく、リンクし合うこころ同士が相互に話し合うことによって、一定の理解に至ることがトポス心理療法オフィスの理想とするインフォームド・コンセントです。

緩和ケアにおいて、治療者の正しい説明が患者にとって暴力になり得ることが岸本(2015)によって指摘されています。これはどちらかといえばインフォームド・コンセントというよりも、病名の告知に関わるところが大きいのですが、インフォームド・コンセントの際にも十分に当てはまるように思われます。カウンセリングの場面でも、すべては対話の中で説明されます。カウンセラーは、カウンセリングを行う上での約束事や臨床心理学的なエビデンスにもとづく知識を、それが正しいことだからといって一方的に伝達するのでは、相談者としては口をつぐんでうなずくしかないでしょう。そこにあるのは、相談者のことを思いやる気持ちではなく、落ち度のないように説明義務を果たして自分の身を守ろうとする焦りの気持ちなのかもしれません。たしかに職業上の責任は果たされるでしょう。しかし、そのようなかたちのインフォームド・コンセントでは相談者が置き去りにされてしまい、カウンセラーに対しては仕方なく同意するしかないのです。主体性が尊重された自己決定ではなく、同意させられるわけです。このようなことにならないように、相談者ファーストの説明と同意を実現することが大切であると考えます。

参考文献
岸本寛史「緩和ケアという物語-正しい説明という暴力」創元社



札幌で公認心理師のカウンセリングはトポス心理療法オフィスへ