トポス心理療法オフィスのご案内
札幌の中央部に開設されたトポス心理療法オフィスでは、学生相談・児童青年期心理臨床・精神科心療内科臨床などの分野で、カウンセリング・心理療法に携わってきた実績のある公認心理師が、心の悩みを抱える方々に対して各種の心理的支援を行っています。幅広い領域で経験を積んだセラピストが、専門性に裏打ちされた、心の自然に優しいサイコセラピーを提供します。
人は誰しも人生のある時期に立ち止まり、何かについて悩み苦しむものです。それは過去の出来事であったり、将来のことであったり、いま現在の重荷であったりするでしょう。しかし、その悩み苦しみは、これまで生きてきた今ある自分から新しい自分に生まれ変わるためのチャンスを与えてくれることがあります。カウンセリングとは、このような悩みの中に隠れて見えなくなっている希望の光を、一緒に探す旅路なのかもしれません。
札幌でカウンセリングルームをお探しなら【トポス心理療法オフィス】
札幌市北区のトポス心理療法オフィスは、専門のカウンセラーによる心理カウンセリングを行っています。心の悩みや問題がございましたら、一人で抱え込まずにご相談ください。不登校やひきこもりなどのお子様のお悩みや、家庭生活・家族関係のお悩み、職場の人間関係のお悩み、ご自身の心理的問題などのご相談、女性のためのカウンセリングなどに応じています。傾聴カウンセリング、箱庭療法、絵画療法、夢分析などを用いてアプローチします。ご相談者お一人お一人に合った上質な支援をご提供するため完全予約制となっておりますので、まずはメールかお電話にてお気軽にご連絡ください。
臨床心理士・公認心理師+アルファによる心理的支援
当オフィスでは、臨床心理士と公認心理師のライセンスを合わせて持つ有資格者が相談者の心理的支援を行います。日本における心理カウンセリングのライセンスとしては、前者は社会的信用のある民間資格であり、後者は唯一の国家資格です。しかし、私たち心理臨床家にとって、資格を持つことはあくまで出発点にすぎません。トポス心理療法オフィスでは、これらの資格を前提として、長年の経験と実績のあるトレーニングを積んだ心理カウンセラーが応対いたします。良質のカウンセリング・心理療法を提供するために必要なトレーニングを今後も継続しながら、札幌の皆様の心理的支援に尽力いたしますので、どうぞよろしくお願いします。
トポスとは
ギリシア語で「場所( τόπος )」を意味します。「私」があるがままの自分でいることのできる場所、生きていくための勇気や力が内面から湧き上がってくるような場所、大切な時間を共にすごすことができる場所、札幌のトポス心理療法オフィスは、皆様にとってそのような特別な場であり続けたいと考えています。
カウンセリング・トピックス
ここからは、カウンセリングのトピックスについていくつかお話しします。記事は以下のタイトル順に並んでいます。これからカウンセリングを受けてみようとお考えの方にとって、少しでもご参考になれば幸いです。
* 幸せになるためのカウンセリング
* カウンセリングルームを選ぶための目安
* カウンセリングにまつわるイメージ
* カウンセリングの種類によって効果に違いはあるのか
* 何回通えばよいのか
* 公認心理師のカウンセリング
* 札幌のカウンセリング事情
コンパクトにまとめましたが、中には文章として長めのトピックもあります。途中にいくつかボタンを設置していますから、お読みになって疲れたときにはクリックしてお戻りください。では、どうぞご覧ください。
幸せになるためのカウンセリング
特にカウンセリング心理学の分野に言えることです。この分野には、これまでどちらかと言えば人間の暗い、否定的な側面について研究してきた歴史があります。しかし現代では、レジリエンス(精神的回復力)やストレングス(強み)など、人間の肯定的側面が注目されつつあります。その意味で現代の心理学は、全体として、人間の幸福(well-being)の実現を目的として研究が進められているように思われます。セリグマンらのポジティヴ心理学がその代表です。
幸せになるために生まれてきたというのに、自分には全く幸福感がないという人はいませんか? 幸せになることを目的としてカウンセリングを行うことは難しいかもしれません。しかし、自分が幸せになることを妨げている何かに気づくこと、その解消に取り組むことを目的にするのであれば、カウンセリングは幸せを手にするための大きな力になってくれるはずです。
幸せになったとしてもすぐに不幸せがやってくると考えがちな人はいませんか? そのような方は、きっとこれまでの生い立ちなどの影響があって、悲観的な考えに陥りがちであるのかもしれません。幸せになるためには、幸福感を感じられるようになるためには、そのような自分にまず気がつくことが重要になってきます。気づきの後にやってくるのは発見です。頬をなでる風が心地よいことに気づいて、驚くようになるかもしれません。今まで気にかけることもなかった木々の緑が美しく感じられて、そこに立ち止まるようになるかもしれません。自分を照らす太陽がポカポカと温かく感じられて、ただそれだけで心が満たされるようになるかもしれません。
自然を感じて自分がそれによって生かされていることを知り、身近にあるにもかかわらず気がつかなかった小さな幸せに感謝できるようになること、これが幸せになるために心の準備が整ったことのサインになるでしょう。後は野となれ山となれとは言いませんが、過去の雑念にとらわれている状態からいま目の前にある現実を生きられるようになると、おのずから未来が開かれてきます。幸せになるための未来を切り開くために、カウンセリングは相談者の皆様の力になることができるはずです。精神的な症状を緩和するための「治療的なカウンセリング」を超えて、幸せになるための「成長促進的なカウンセリング」を目指しているのが、現代のカウンセリング心理学なのかもしれません。
参考文献
Martin E. P. Seligman, PhD, and Mihaly Csikszentmihalyi (Guest Editors)
Positive Psychology, Special issue of American Psychologist,Vol. 55 No.
1 January 2000
カウンセリングルームを選ぶための目安
札幌で心理カウンセリングを行っている施設は増加傾向にあります(2019年現在)。医療、福祉、司法、産業、教育が5大領域といえますが、カウンセラーが個人開業する私設心理相談室を含めると、大きく6つの領域で心理的支援が行われています。こうした領域の違いはありますが、カウンセリングを担当するのは主に心理士、臨床心理技術者、カウンセラー、セラピストなどと呼ばれる専門家で、大学や大学院で臨床心理学や教育学系の教育を受けていることがほとんどです。教育学系と聞くと意外かもしれませんが、日本では伝統的に教育学部の中でカウンセリング教育が行われてきた経緯があるのです。大学や大学院などの教育機関以外にも、カウンセラーを養成している機関はあります。たとえば、民間の施設が独自にカウンセラーを養成して資格を発行したり、産業カウンセラーのように厚生労働省が認定する養成講座を受講して資格を得たりする場合がそれです。
さまざまな領域の中から、カウンセリングルーム(私設心理相談室)を開業しているカウンセラーに的を絞ってお話します。開業カウンセラーが所有している資格は多様です。心理的支援にかかわる唯一の国家資格としての公認心理師を筆頭として、臨床心理士、産業カウンセラー、学校心理士、臨床発達心理士・・・・などです。これからカウンセリングを受けようと考えている相談者の方々にとっては、いったいどの資格を持っているカウンセラーのところへ行けばよいのかと迷ってしまうに違いありません。評判や口コミも気になるでしょう。迷っている方に助言できるのは、時代の流れもあり、おそらくこれからは国家資格の①「公認心理師を持っていること」がカウンセラー選択の必須条件になるはずということです。選択の目安としてもう一つ言えるのは、カウンセラーに②「精神科病院・心療内科クリニックの臨床経験があること」です。カウンセラーは医師ではありませんが、精神科医の治療と薬物療法が必要な状態を経験として知っていることによって、相談者への心理的支援としてのカウンセリングに関してより適切な判断をすることが可能になるように思われるのです。もちろんこれはあくまで個人的な見解にすぎませんが、これからご相談をお考えの方や迷っている方は、この二点を参考にしてカウンセラーやカウンセリングルームを選択されることをおすすめします。
参考文献
氏原寛・ 成田善弘 (編集) 診断と見立て―心理アセスメント. 培風館.
カウンセリングにまつわるイメージ
カウンセリングの世界には、権威のあるカウンセラーの援助を受ける劣位の位置に置かれたクライエント(相談者)というイメージが古くからありました。いわゆる父権主義(paternalism)のことです。医療の世界で考えてみましょう。むかし、むかし、患者と呼ばれる人たちは、治療にかかわる自己決定権を医師に委ねることで、もっぱらその指示に従ってきました。医師は専門的な医学的知識のあるスペシャリストで、患者はあくまでその専門性に従い、治療していただく劣位の存在だったわけです。カウンセリングも、そのような権威的な関係性の中で行われてきた経緯があります。
しかし、時代は移り変わりました。いまは、クライエントとカウンセラーが優劣のない対等な関係の中で、協働(コラボレーション)することが当然となりつつあります。たしかに、援助的な相談関係の中で、クライエントとカウンセラーという役割を外してしまうことは難しいでしょう。しかし、そのような役割の違いにもかかわらず、互いに対等な一人の人間同士として出会うことができるのが現代のカウンセリングであるように思われます。このような非対称的な関係性に対する反省を踏まえて、権威的なカウンセリングとは真逆のスタンスをとる方法として生まれたのが、たとえばカール・ロジャーズのクライエント中心療法であるのかもしれません。
クライエントの心にメスを入れて治療するカウンセラー、これが古いイメージです。しかし、現代のカウンセリングは、このような外科医が行う手術の譬えからは遠く隔たっています。カウンセラーがクライエントに対して一方的に何かを行うのではありません。クライエントとカウンセラーが一緒になって何かを行う、同じ方向を目指して二人して歩いていく、クライエントの苦しみを共に苦しみながら一緒にいる、こうした譬えの方が現代のカウンセリングにはマッチしているはずです。キーワードは「協働(コラボレーション)」です。カウンセリングというステージの中央に立つのはカウンセラーではありません。それはあくまでクライエントです。主役としてステージに立つクライエントを協働的なスタンスで支援するのが、現代のカウンセラーが担う役割なのです。
参考文献
中井久夫『家族の深淵』みすず書房
カール・R. ロジャーズ『クライアント中心療法』岩崎学術出版社
カウンセリングの種類によって効果に違いはあるのか
カウンセリングにはさまざまな立場と技法があります。たとえば、ロジャーズ派のクライエント中心療法、フロイト派の精神分析療法、ユング派の分析心理学、認知と行動に働きかけるさまざまな立場と技法が組み込まれた一群としての認知・行動療法、ナラティヴ・セラピーや解決志向アプローチを主とするブリーフセラピーと家族療法、などがそれです。その他にも枚挙にいとまがありませんが、新しい技法が生まれては消えることを繰り返しており、いまとなっては数えきれないほどの種類のカウンセリングが存在しているように思います。相談者の方にしてみると、いったいどんな立場のカウンセラーのところへ行けばよいのか、どんな技法が自分の悩みの解決にあっているのか、皆目見当がつかないほどでしょう。
このような研究があります。カウンセリングによって相談者が肯定的に変化するとして、その効果の要因をどのように考えるとよいのか、ランバート(1992)という研究者が驚くような数字を出しているのです。それによると、カウンセリングの効果の要因には、主に自然回復を意味する①「治療外変化」、プラシーボ効果を意味する②「期待」、カウンセラーの立場によって異なるさまざまな③「技法」、主に相談者とカウンセラーの関係性を意味する④「関係変数」があって、それぞれの割合が明示されています。カウンセリングの効果のうち「治療外変化」が40%、「期待」が15%、「技法」が15%、「関係変数」が30%と示されています。この数字は、さまざまな技法の違いを超えて共通している、共通要因に関するものです。
相談者の方が潜在的に持っている自然回復する力と、カウンセリングに寄せる期待という二つの要因が全体の55%を占めています。ということは、相談者の方々が回復してその効果が認められた場合、半分以上の割合はもっぱら相談者側の要因として考えられるわけです。一方で、カウンセラー側の要因である技法に至っては、わずか15%を占めるにすぎません。そして、相談者とカウンセラーのあいだに作り出される関係性は、相談者側の要因の割合を下回るものの、カウンセラー側の要因である技法の割合を上回っていることが理解されます。
皆さんはこの数字を見てどう思いますか? ランバートが示している割合には賛否両論があります。しかし、カウンセリングの効果についてあれこれと考えるときには、とても役に立つ数字だと思います。
その他にも、これまでに蓄積された効果研究から、a.多くの相談者はカウンセリングによる介入がなくても自然回復すること、b.カウンセリングには全体として自然回復を上回る効果があること、c.生み出される効果としてある技法が他の技法よりも優れているとは言えないこと、などが分かっています。こうしたことから総合的に言えるのは、カウンセリングにおいて、①相談者の自然回復力・自己治癒力が最大限に引き出されること、②相談者に希望が与えられること、③相談者とカウンセラーの関係性が良好に保たれること、という諸条件が実現されるかぎり、その効果はカウンセラーの用いる技法によってはあまり大きく左右されないようだということです。
医学の世界には、ある病気や症状に対して特別によく効く薬という意味での特効薬という考え方があります。同じようにカウンセリングも、特定の技法が特定の精神症状によく効く可能性を否定することはできません。これを、共通要因に対する特殊要因と言います。ただ、このことに関してはまだエビデンスを蓄積している段階にあり、はっきりとしたことは言えないように思います。相談者の方に特定の技法に対する強い思い入れがある場合をのぞきますが、カウンセリングの効果つまり効き目について重視するのであれば、上に書いた三つの条件に注目されることをお勧めいたします。
出典: ミック・クーパー著『エビデンスにもとづくカウンセリング効果の研究-クライエントにとって何が最も役に立つのか』岩崎学術出版社 (Mick
Cooper (2008) Essential Research Findings in Counselling and Psychotherapy.
Sage.)
何回通えばよいのか
いまとなっては実現することが難しいでしょうが、1世紀くらい前の古典的なフロイトの精神分析だと、ほとんど毎日、何年にもわたって継続するのが普通でした。このようなカウンセリングの長期化に対する反省もあって、現代では期間の短縮化が常識となっています。もっとも短いものはシングル・セッション・セラピーと呼ばれるもので、たった1回で終了となります。これはブリーフセラピーのひとつです。
セッションの頻度と期間は、相談者の抱えている困難の性質や、話し合いのうえで設定される目標などによって、大きく異なってくるように思います。このような言い方になりますが、相談者に適した方法でカウンセリングを行うかぎり、その頻度と回数は一人ひとり異なったものになってしまうのです。ですから、個別の相談者に対して、あらかじめ何回のセッションが必要なのか予想するのは困難なことです。
ただ、一人ひとりの個別的なレベルを離れて、一般的なレベルで考えると、とても興味深い調査結果が出ています。それは、相談者が改善するには、一般的にどれくらいの回数が必要なのかという問いに答えてくれるものです。その調査によると、カウンセリングを受ける全体の相談者のうち、50%の相談者が好転するのには10回から20回の回数が必要で、75%の相談者が好転するのには60回程度のセッション回数が必要だということが分かっています。
これまでに行われている回数と効果に関する研究からは、より多くのカウンセリングを受けるほど、より多くの相談者が改善する傾向のあることが理解されます。ただし、効果の程度という点では、回数が多くなればなるほど効果の大きさが低減(逓減)していくことも分かっています。つまり、2回目のセッションまでには3分の1の相談者が改善を見せるというデータがある一方で、回数が増加するにつれて改善の程度は減少していくのです。回数が増えるほど改善するのは確かなことですが、回数と効果は直線的な関係にあるとは理解されないわけです。ということは、カウンセリングの効果の程度は、最初の数回が最も大きいと言えるのかもしれません。
一般的なことを言えば、カウンセリングは初期段階での効果が大きく、サービスを利用する半分の相談者は10回から20回のセッションで改善が見込めるでしょう。5回に満たない回数で好転する相談者も全体の3分の1程度存在することになります。ただ、さらに25%(全体としては75%)の相談者が肯定的な変化の兆しを見せるのは60回程度のセッションを経てからであって、1年以上の期間を要することになると思います。
ご参考になったでしょうか。最後にもう一度述べておきます。このような調査結果にもかかわらず、適切なセッションの回数は、一人ひとりの相談者によってさまざまです。ここに書かれていることは、あくまでカウンセリングの一般的なレベルでのお話です。
出典: ミック・クーパー著 (同上)
公認心理師のカウンセリング
第1回公認心理師試験とその追加試験が平成30年(2018年)に実施されました。厚生労働省の資料によると、合格者はおよそ29000人ほどになっています。また、合格者のうち北海道に住所のある人が、およそ700人ということです。札幌市内で活躍する現任の心理士も、数多く合格したことでしょう。ここでは、心理的支援の専門職である公認心理師のカウンセリングについてお話します。
2015年に制定された公認心理師法には、公認心理師の業務について次のように規定されています。少し長くなりますが、第一章総則の第一条と第二条だけ抜粋しましょう。
一 目的 公認心理師の資格を定めて、その業務の適正を図り、もって国民の心の健康の保持増進に寄与することを目的とする。
二 定義 「公認心理師」とは、公認心理師登録簿への登録を受け、公認心理師の名称を用いて、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、次に掲げる行為を行うことを業とする者をいう。
① 心理に関する支援を要する者の心理状態の観察、その結果の分析
② 心理に関する支援を要する者に対する、その心理に関する相談及び助言、指導その他の援助
③ 心理に関する支援を要する者の関係者に対する相談及び助言、指導その他の援助
④ 心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供
法的な言葉遣いになっているので堅い印象があり、容易には理解しにくい表現になっていると思います。できるかぎり分かりやすい言葉で、公認心理師のカウンセリングについて解説してみます。
まず公認心理師の業務について、相談者の皆様の心の健康を保持することだけでなく、増進することも目的として掲げられています。不健康な状態へと悪化した心の健康状態の回復を支援することだけでなく、健康な心をさらに増進することも公認心理師には求められているように思います。
次に、公認心理師の業務には、心理学の専門知識と技術が求められています。ここのところが、これまで主流であった臨床心理士とは少しだけ違うのかもしれません。というのは、カウンセリングは主として「臨床心理学」を学問的なバックボーンにするものと考えられるのですが、公認心理師では、それが「心理学」の専門知識と技術とされているからです。分かりやすく言えば、フロイトの精神分析学やユングの分析心理学などが属する臨床心理学を超えて、認知心理学や社会心理学や発達心理学などが属する一般的な心理学も含められているということになるでしょう。
この法律では、公認心理師の心理的支援を受ける相談者のことが「心理に関する支援を要する者」と呼ばれています。要支援者ということなのでしょう。カウンセリングの世界では、これまでクライエント、利用者、相談者などの呼び方があったわけですが、表現が新たにひとつ加わったかたちになるでしょうか。
最後に、公認心理師のカウンセリングとして、「相談」「助言」「指導」「教育」「情報の提供」「その他の援助」があげられています。とても幅の広い心理的支援が、公認心理師には求められています。カウンセリングというと、心理カウンセラーが相談者のお話をひたすら傾聴する姿がイメージされやすいと思います。しかし、公認心理師が行うことには、相談者のお話を聞くことだけではなく、助言したり、指導したり、教育したりという、非常に積極的な活動も含められることが明示されています。一人ひとり異なる要支援者のニーズに応じて、多様な相談援助活動を行うのが公認心理師なのです。
参考資料
厚生労働省ウェブサイト・公認心理師
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000116049.html
札幌のカウンセリング事情
2018年10月1日現在の資料になります。札幌市まちづくり政策局政策企画部企画課のウェブサイトによると、札幌の人口は1,965,940人で、うち男性が914,851人、女性が1,051,089人、世帯数は953,039世帯にのぼるということです。札幌市民の平均年齢は47.0歳、男性が45.3歳、女性が48.5歳です。ほぼ200万人が札幌で生活していることになります。北海道の全体の人口が約530万人ですから、札幌の一極集中は明らかです。また、2018年10月現在の推計人口によると、東京都内をのぞきますが、政令指定都市としては、横浜市の約370万人、大阪市の約270万人、名古屋市の約230万人に次いで人口が多いのが、札幌市ということになります。
さて、このような札幌のカウンセリング事情について考えてみます。この文章の前の記事「公認心理師のカウンセリング」の中で、第1回公認心理師試験の北海道の合格者が約700人であることをお話しました。実際にはもう少し少なく見積もることができると思いますが、いま現在札幌に700人の公認心理師が存在すると仮定しましょう。この700人に対して、札幌市民は200万人でした。単純に計算すると、公認心理師一人につき2800人の割合になります。心理カウンセラーが一人で2800人に対して心理的支援を提供するとなると、はたしてそのようなことは可能なのでしょうか。もちろん無理でしょう。問題は、この街で生活する人たちの中に、潜在的にどれくらいカウンセリングを求めている人がいるのかということに尽きると思います。
しかし、残念ながら、札幌のカウンセリングの需要に関して正確な数字を把握することは困難です。市民の中でこれまで心理的支援を受けたことのある方の人数、一生のうちカウンセリングを一度かそれ以上利用する人と一度も利用しない人の割合、そのようなデータがあれば市民に対して必要な公認心理師の数を推定することができるのですが、現状ではそのようなデータそのものが存在しないのです。
そのようなわけで、今の段階で存在する札幌の公認心理師が、カウンセリングを求める札幌市民に対して多いのか、少ないのか、あるいはほどほどの人数なのか、はっきりと断定することができません。ただ、公認心理師が活躍する領域は幅広く、領域によってムラがあるように思えます。「少ないのでは」と考えられるのは、たとえば、児童相談所の相談員は対応すべき児童虐待の件数が増加しているので、明らかに人手が足りないでしょう。精神科クリニックや心療内科にしても、臨床心理士のカウンセリングを受けるには予約待ちを余儀なくされることがあるようです。確かに、20~30年前と比較すれば、札幌の心理士の人数はかなり増えてはいるのですが、すべての領域を見渡すと、全体としてはやはりまだ少し足りない印象を持っています。
相談者の方が何らかの援助を必要とし、それを求める状況を想像してみましょう。自分のことや身近にいる誰かのことで、悩み苦しみが膨らんできたとします。最初は独力で対処しようとしますが、自分一人の力ではどうすることもできないと途方に暮れるときがやってきました。その人は生粋の道産子かもしれませんし、札幌に引越ししてきたばかりかもしれません。こんなときどうすればよいのか、この街には自分が抱えている問題の相談ができるところがあるのだろうか。おそらく、そのようなときにまず思い浮かぶのはカウンセリングでしょう。思い立ったら、まずスマホを使って相談機関を検索してみます。しかし、どうでしょう。検索画面を見ると、一口にカウンセリングと言ってもさまざまな種類があり、実に多種多様な人たちが「相談」を生業にしていることを発見して驚くはずです。そして、検索された大量の情報の中から、自分の悩み苦しみの解決にぴったり合ったカウンセリング・サービスや、心理学を修めた心理カウンセラーが専門的な支援を提供しているところを見つけ出すのは、それだけでもかなりの時間を要することなのかもしれません。
相談者の皆様が、何か困ったことができたとき、すぐにカウンセリング・サービスにアクセスできることを願っています。援助を求める方が、求めるそのときに、すぐにご利用できますように。それから、この街で、公認心理師や専門の心理的支援を提供する施設が、相談者の皆様のニーズを満たすように増加することを願っています。必要なときすぐにつながることのできる街、そんな札幌がいつしか実現されますように。いまから10年後、札幌のカウンセリング事情はどうなっているのでしょうか。期待して待ちたいと思います。(2019年4月 記す)
参考資料
札幌市ウェブサイト・人口統計
http://www.city.sapporo.jp/toukei/jinko/jinko.html
[Public Relations]
当カウンセリングルームは、札幌の中心部に開設されています。徒歩圏内には、観光名所の時計台、シンボルタワーのさっぽろテレビ塔、雪まつりの大通公園、赤れんがの愛称で知られている北海道庁旧本庁舎、クラーク博士の胸像がある北海道大学のキャンパスなどがあります。市営地下鉄の東西線、南北線、東豊線、JR北海道の函館本線、千歳線、学園都市線などの沿線にお住まいの方は、とてもアクセスしやすい立地です。ストレスからくる不安・パニック・抑うつ気分(うつ病)など、メンタルヘルス全般に関する心の相談はもちろんのこと、親子関係・夫婦関係・対人関係のお悩みなどに関するご相談も承っています。